夜空に大きく広がる花火は、肉眼で見るだけでも美しい被写体です。
一方で、カメラで撮影してみると、
「花火が白く飛んでしまった」
「写真が暗すぎる」
「花火がブレてしまった」
「ピントが合わない」
「思ったより迫力のない写真になった」
など、意外と難しく感じることがあります。
花火撮影では、一般的な夜景撮影とは少し違った設定が必要です。
特に重要なのが、三脚を使ってシャッタースピードを長めに設定し、花火が開く軌跡を1枚の写真に収めることです。
また、PLフィルターやNDフィルター、ブラックミストなどのフィルターを使うことで、花火の光をコントロールし、写真の雰囲気を変えることもできます。
この記事では、花火をきれいに撮影するための基本設定から、フィルターの活用方法、現場での撮影テクニックまで詳しく解説します。
花火撮影の基本設定

まずは、花火撮影で迷ったときに使える基本設定を紹介します。
花火撮影の基本設定
| 設定項目 | 基本設定の目安 |
|---|---|
| 撮影モード | M(マニュアル) |
| ISO | 100~200程度 |
| 絞り | F8~F11程度 |
| シャッタースピード | 2~10秒程度 |
| フォーカス | MF(マニュアルフォーカス) |
| ホワイトバランス | 3500~5000K程度 |
| 手ブレ補正 | 三脚使用時はOFFを検討 |
| ファイル形式 | RAW推奨 |
| 三脚 | 必須に近い |
もちろん、花火の種類や明るさ、撮影場所によって最適な設定は変わります。
まずはこの設定をベースにして、撮影した画像を確認しながら調整していきましょう。
なぜマニュアルモードがおすすめ?
花火撮影では、M(マニュアル)モードがおすすめです。
花火が打ち上がるたびに画面の明るさが大きく変化するため、カメラの自動露出に任せると、写真ごとに露出が変わってしまうことがあります。
マニュアルモードなら、
-
ISO
-
絞り
-
シャッタースピード
-
ピント
を自分で固定できます。
花火撮影では、基本的な設定を決めておき、撮影結果を見ながら少しずつ調整する方法が使いやすいでしょう。
ISOは低めからスタート
花火そのものは非常に明るい光源です。
そのため、夜だからといってISOを高くする必要はありません。
まずは、
ISO100
またはカメラによってはISO200
程度からスタートしてみましょう。
ISOを低くすることで、
-
ノイズを抑えられる
-
花火の色をきれいに残しやすい
-
白飛びを抑えやすい
といったメリットがあります。
ただし、背景の街並みや建物なども一緒に撮影する場合は、必要に応じてISOを調整します。
絞りはF8~F11が基本
花火撮影では、F8~F11程度から始めると設定しやすいでしょう。
花火は遠くにあるため、絞りを大きく開ける必要はありません。
また、花火の光は非常に明るいため、F1.4やF2.8などの大口径設定では露出オーバーになりやすくなります。
F8前後まで絞ることで、花火の光を適度に抑えながら、画面全体をシャープに仕上げやすくなります。
シャッタースピードは2~10秒が目安
花火撮影で特徴的なのが、長めのシャッタースピードです。
例えば、
3秒
5秒
8秒
などを使います。
花火が打ち上がってから開くまでの軌跡を長時間露光することで、花火の光が線として写ります。
「バルブ撮影」も便利
花火撮影では、カメラのバルブ(BULB)モードを使う方法もあります。
バルブ撮影では、シャッターボタンを押している間だけシャッターを開けることができます。
花火が打ち上がるタイミングに合わせてシャッターを開き、
花火が開く → 光の軌跡が伸びる → 消える
ところでシャッターを閉じます。
これによって、花火の大きさやタイミングに合わせて露光時間を調整できます。
リモートレリーズやワイヤレスリモコンがあると、カメラに触れずに撮影できるため便利です。
三脚はほぼ必須
花火を長秒露光で撮影するなら、三脚を用意しましょう。
2~10秒程度のシャッタースピードでは、手持ち撮影でカメラを完全に固定するのは難しいためです。
三脚を使うことで、
-
花火の軌跡をきれいに残せる
-
構図を固定できる
-
同じ構図で何枚も撮影できる
-
花火と風景を一緒に写せる
というメリットがあります。
手ブレを防ぐための設定
三脚を使う場合は、カメラの手ブレ補正機能をOFFにすることを検討しましょう。
一部のカメラやレンズでは、三脚使用時に手ブレ補正が誤作動し、微細なブレにつながる場合があります。
ただし、最近のカメラやレンズには三脚を検知して自動的に制御するものもあるため、使用機材の説明書を確認してください。
ピントはMFがおすすめ
花火撮影では、オートフォーカス(AF)よりもマニュアルフォーカス(MF)が使いやすいことがあります。
暗い夜空では、AFが花火をうまく認識できず、
「ピントが迷う」
「撮影するたびにピント位置が変わる」
といった問題が起こることがあります。
ピント合わせの方法
花火が始まる前に、遠くの建物や街灯などを利用してピントを合わせます。
遠景にピントを合わせたら、
AF → MF
に切り替えて、ピント位置を固定します。
レンズの距離指標だけを見て無限遠に合わせる方法もありますが、レンズによっては無限遠の位置と実際のピント位置が完全には一致しないことがあります。
そのため、できればライブビューを拡大して、遠くの光源を確認しながらピントを合わせると安心です。
ホワイトバランスも固定する
花火はさまざまな色で発光します。
オートホワイトバランス(AWB)でも撮影できますが、写真ごとの色味を安定させたいなら、ホワイトバランスを固定する方法もあります。
例えば、
3500~4500K
程度から試してみるとよいでしょう。
青みのある夜空を強調したい場合は低め、暖かい雰囲気にしたい場合は高めに設定します。
RAWで撮影しておけば、後からホワイトバランスを調整することもできます。
RAW撮影がおすすめ
花火は暗い夜空と非常に明るい光が同時に存在するため、RAWで撮影しておくと後処理の自由度が高くなります。
RAWなら、
-
ハイライト
-
シャドウ
-
ホワイトバランス
-
色温度
-
彩度
-
コントラスト
などを調整しやすくなります。
特に花火の色を自然に仕上げたい場合は、RAW撮影がおすすめです。
花火をきれいに撮る「タイミング」

設定だけでなく、シャッターを切るタイミングも重要です。
花火が大きく開く瞬間を狙うだけでなく、
打ち上がる → 開く → 消える
までを1枚に収めることを意識してみましょう。
例えば、
-
花火が打ち上がる
-
シャッターを開く
-
花火が開く
-
光の軌跡が伸びる
-
花火が消える
-
シャッターを閉じる
という流れです。
この方法では、花火の「線」がきれいに伸びた写真を撮影できます。
長すぎる露光には注意
「長時間露光なら長いほどいい」というわけではありません。
花火が何発も重なると、
花火の光が重なって白く飛んでしまう
ことがあります。
1枚の写真にたくさんの花火を入れたい場合でも、明るさを確認しながら露光時間を調整しましょう。
NDフィルターは花火撮影で使える?
ここからがフィルターの話です。
結論から言うと、花火撮影では通常、NDフィルターは必須ではありません。
夜間の花火はもともと暗い環境なので、NDフィルターを使って光量を減らす必要性は基本的に低いためです。
ただし、特殊な状況では活用できます。
NDフィルターを使うメリット
例えば、
花火+夕暮れの空
を撮影する場合です。
完全に暗くなる前の時間帯では、空や街の明るさに対して花火が明るくなるため、露出のバランスが難しくなることがあります。
このような場合、NDフィルターで光量を少し抑えることで、シャッタースピードや絞りの選択肢を広げられる場合があります。
ただし、NDを濃くしすぎると花火そのものが暗くなるため注意が必要です。
可変NDは基本的には必要ない
動画撮影では非常に便利な可変NDですが、一般的な夜の花火撮影では、あえて使う必要はありません。
むしろ、
ISO100
F8~F11
適切なシャッタースピード
で露出を調整するほうがシンプルです。
NDフィルターは「必要なときだけ使う」という考え方でよいでしょう。
PLフィルターはどう?
PLフィルターも、一般的な花火撮影では必須ではありません。
PLフィルターは、反射光や偏光をコントロールするフィルターです。
花火そのものには、PLフィルターで大きく改善できるような反射光は基本的にありません。
そのため、
「花火をきれいにするためにPLフィルターを使う」
という目的では、優先順位は低いでしょう。
ただし「花火+水面」ならPLが面白い
花火大会では、湖や川など水辺から撮影するケースがあります。
この場合、PLフィルターを使うことで、水面の反射をコントロールできます。
例えば、
花火の水面リフレクションを残したい
ならPLの効果を弱める。
逆に、
水面の反射を抑えて、背景を見せたい
ならPLの効果を強める。
という使い分けができます。
ただし、PLフィルターには光量を減らす効果もあるため、夜間撮影ではシャッタースピードやISOへの影響も考慮する必要があります。
ブラックミストは花火と相性がいい
花火撮影で「フィルターによる表現」を楽しみたいなら、ブラックミスト系のフィルターは面白い選択肢です。
ブラックミストは、強い光源をやわらかく拡散させることで、光ににじみを加える効果があります。
花火に使用すると、
花火の光が少し柔らかく広がる
ことで、通常のシャープな花火とは異なる雰囲気に仕上げられます。
ブラックミストは強さ選びが重要
ブラックミストには、
-
1/8
-
1/4
-
1/2
など、さまざまな強さがあります。
花火撮影では、まず弱めの1/8程度から試すと扱いやすいでしょう。
効果が強すぎると、
-
花火がにじみすぎる
-
細かな光の線が失われる
-
コントラストが下がる
-
写真全体が眠く見える
ことがあります。
花火そのもののディテールを残したいなら、強いフィルターを使うより、弱めのフィルターで少しだけ光を柔らかくするほうが使いやすいでしょう。
フィルターなしと比較して撮影する
フィルターを使う場合は、ぜひ、
フィルターなし
↓
ブラックミスト1/8
↓
ブラックミスト1/4
のように比較して撮影してみましょう。
花火は1回の打ち上げで撮影できるチャンスが限られるため、可能ならフィルターを外したカットも残しておくと安心です。
花火と風景を一緒に撮る

花火だけを大きく撮るのも定番ですが、周囲の風景を入れると写真の印象が大きく変わります。
例えば、
-
山
-
川
-
湖
-
街並み
-
城
-
橋
-
建物
などを花火と一緒に構図に入れてみましょう。
「どこの花火大会なのか」が写真から伝わるため、記録写真としても作品としても面白くなります。
広角レンズで撮るときのポイント
花火は想像以上に大きく広がります。
初めて撮影する場合は、望遠よりも少し広めの焦点距離からスタートするのがおすすめです。
例えば、
24mm
28mm
35mm
などです。
最初から望遠で構図を狭くすると、花火が画面からはみ出してしまうことがあります。
まず広めに構図を作り、花火の大きさを確認しながら調整しましょう。
花火撮影で失敗しやすいポイント
花火が白くなる
原因:
露出オーバー
対策:
-
ISOを下げる
-
絞る
-
シャッタースピードを短くする
-
1回の露光に入れる花火の数を減らす
花火が暗すぎる
原因:
露光不足
対策:
-
シャッタースピードを長くする
-
ISOを少し上げる
-
絞りを少し開ける
花火がブレる
原因:
-
三脚が不安定
-
シャッター操作による振動
-
強風
-
三脚にストラップなどが当たっている
対策:
セルフタイマーやリモートレリーズを使う
といった方法が有効です。
ピントが合わない
原因:
暗い場所でAFが迷っている
対策:
遠景でピントを合わせてMFに切り替える
花火撮影のおすすめワークフロー
最後に、現場で迷わないための流れをまとめます。
STEP 1:構図を決める
花火だけにするか、風景も入れるかを決めます。
↓
STEP 2:三脚をセット
カメラをしっかり固定します。
↓
STEP 3:ピントを合わせる
遠景にAFでピントを合わせてからMFに切り替えます。
↓
STEP 4:基本設定
ISO100
F8~F11
SS 2~5秒
程度からスタートします。
↓
STEP 5:花火を撮影
花火の打ち上げタイミングに合わせてシャッターを開きます。
↓
STEP 6:撮影画像を確認
花火が白飛びしていないか、暗すぎないかを確認します。
↓
STEP 7:SSを調整
明るすぎるなら短く、暗すぎるなら長くします。
↓
STEP 8:フィルターを試す
表現を変えたい場合はブラックミストなどを試します。
花火撮影の設定を迷ったらこの設定から
最初の1枚を撮るなら、次の設定を基準にしてみましょう。
Mモード
ISO100
F8
SS 3秒
MF
WB 4000K前後
RAW
三脚使用
ここから花火の明るさや種類に合わせて調整していきます。
花火が白飛びするならシャッタースピードを短く。
花火の光の軌跡をもっと長くしたいならシャッタースピードを長く。
このように調整すると、撮影結果をコントロールしやすくなります。
まとめ
花火をきれいに撮影するためには、まず三脚を使い、低ISO・適切な絞り・長めのシャッタースピードで撮影することが基本です。
基本設定としては、
-
ISO100~200
-
F8~F11
-
SS 2~10秒
-
MF
-
RAW
-
三脚
あたりからスタートするとよいでしょう。
フィルターについては、夜の花火撮影ではNDやPLは必須ではありません。
一方、光を柔らかくして幻想的な雰囲気を作りたい場合は、ブラックミスト系フィルターが面白い選択肢になります。
また、水面に映る花火を撮影する場合は、PLフィルターを使って反射をコントロールすることもできます。
最も重要なのは、フィルターを使うこと自体ではありません。
「花火の光をどう見せたいか」
を考えて、必要なフィルターを選ぶことです。
まずは、
三脚+ISO100+F8+SS3秒+MF
を基本に撮影してみましょう。
そこからシャッタースピードを調整したり、ブラックミストなどのフィルターを組み合わせたりすることで、自分好みの花火写真を作れるようになります。








